NEWS - 2012年10月
知られざる巨匠
ステンレスの急須と茶筒。1994年ころ、昔から使われていたステンレスの急須(プラスチックのハンドルやつまみが付いていた)
ものを、リデザインした商品です。
今回はこの商品を作り続けている職人さんを紹介します!
金属加工職人 富田 勝一(Tomita Katsuichi)
(1940-2012)
金属加工の街、新潟県燕市に生まれ、その地に小さなプレス工場をつくる。
これが彼のアトリエだ。
古い杉の木で建てられた昔堅気の工場。表にはドラム缶の中に使用済みの金属片が
たくさん詰まっていた。小さな工場内には、プレス機や旋盤機などの機材があり脂臭く蛍光灯一本の暗い空間。
この空間で、たくさんの「芸術品」が生まれてきた。
彼自身が魂を込めて作り上げるオリジナルのステンレス急須と茶筒以外は、
企業の生産機器の部品下請けをして生計をたてている。
彼にしかできない細かな金属加工術を頼って全国から依頼が来る。その合間をぬって作る作品たち。
下請けの仕事が終わった後に一服。そして作品作り。というのが彼の日課だ。
どんなに疲れていても、絶対に手を抜くことなくステンレス鋼材の一枚が、裁断され曲げて成形される。
一つ一つの部品が生まれてくる。それらを慣れた手つきで溶接し形が見えてくる。
そして磨き上げる。
魔法を見ているように鮮やかに変身していく素材。見ていてうっとりする。
あの美しい曲線を描いた急須や茶筒が生まれる瞬間だ。
この作業を彼はたったひとりで行う。
神聖な儀式は人には触れさせるのを嫌がるように。
彼が作る急須や茶筒は決して、高額な製品ではない。
むしろこの工程を知るとものすごく安価すぎて申し訳なくなってしまう。
値踏みすること自体無粋なことだが、仕事以上の感情が生まれないと続けていくのはほぼ無理である。
しかし彼は”この急須や茶筒を使われる人が笑顔でホッと一息入れる瞬間”を楽しみに創り続ける。
彼の人生の中の好きな時間を映したかのように。
この工場は、彼の代で幕を閉じるのだという。
もう彼も71歳。急須や茶筒の製造も終わるという。
彼の人生をかけて完結する。
商品の詳細はこちら http://blan.jp/products/detail/23